2017年気になった凄いミュージック・ビデオ その2
2017年、気になったミュージック・ビデオの続き。
アメリカのヒットチャートを席巻したラップ、R&Bなどをまとめてみました。
6.Kendrick Lamar - DNA.
2017年を代表する傑作『DAMN.』から、今のところ5曲のMVが作られていて、そのどれもが素晴らしい出来だった。
ドン・チードルがケンドリック・ラマーを嘘発見器にかけ取り調べようとしたら、操られるようにラップを始め、「カンフーケニー」を解放するまでの前半部。
そして車で暴走する5人の女性に、路上でたむろするケニーの仲間たち、モノクロでカメラにまくしたてるケニー、そして意味深なカットがインサートされるというトリッキーな後半部に分かれ、終始異様なテンション。誰かディテールを教えてほしい。
7.JAY-Z - 4:44
JAY-Zのビヨンセへのパーソナルな謝罪がメインの曲のはずなんだけど、レイシズムに関わるニュース映像やインタビュー等が始終インサートされ、政治的なメッセージも前面に出ているアルバムのタイトル曲。とっ散らかっているが、それこそがパーソナル、ということか。終盤JAY-Zとビヨンセが仲睦まじくオンステージしている映像がすごく良い。
8.Eminem - Walk On Water featuring Beyoncé
エミネムが2017年の最後に投下した、女性ヴォーカルのフィーチャリングとしては「STAN」以来の大名曲(「俺は「STAN」を書いたんだぞ」とエミネム自身も凄むが)。
「自分は神じゃないから水の上なんて歩けない」とはじめ、延々と等身大のエミネムの心情が吐露される。
ビヨンセの、エミネムを慰めるような、または聴く者を諭すようなパワフルで、そしてやさしいヴォーカルが泣ける。最後、エミネムが氷の上を歩き、神と思われる「何か」の像にかぶさっていた布を取る。そこにあったのは、やはり自分自身の像だったんだろうか。
9.Calvin Harris - Feels ft. Pharrell Williams, Katy Perry, Big Sean
10.SZA - The Weekend
2017年話題をさらった新人といえばSZA(シザ)。
SF感のあるコンクリートの建物や立体駐車場でSZAが踊るところを、ひたすら引き気味で撮ったこの曲のMVは特に才気走っててやばい。
反復も効果的に使われていて、それがズームイン・アウトとも噛み合ってて上質なムードを漂わせている。まさに取り上げるべき一曲。
日本で近いMVはゲスの極み乙女。の最新曲「戦ってしまうよ」か。
2017年気になった凄いミュージック・ビデオ その1
もう2月だというのに2017年の振り返りをしてみるシリーズ。
まずは、曲自体も好きだけど、それ以上にMVが気になった曲の振り返りです。
1. MONDO GROSSO - ラビリンス
香港・満島ひかり・長回し風。最高のロケーション、最高の素材、最高の撮影。
2. never young beach - お別れの歌
POVでかわいい恋人をひたすら映すMVが邦楽アーティストの中で流行ってるけど、小松菜奈のかわいさは別格。
最近だとマイヘア「いつか結婚しても」とかもそう。ちょっと前だとmol-74「エイプリル」とかも。名曲率高し。スマホでみんな切なくなったり、にやにやしてたりしたいんだろうな。
3. Bruno Mars - That’s What I Like
グラミー受賞も文句なし。マイケルばりの艶に何度も見てしまったMV。
4. Harry Styles - Sign of the Times
ヒットチャートの中で、そのクラシカルなアンセムぶりにどこか安心した名曲。
そのスケール感と浮遊感を体現した素晴らしいMV。
5. あいみょん - 君はロックを聴かない
意外にもブレイクしていないあいみょん。ちょっとクセがあるのかな。
この曲はマイラバ「Hello Again」ばりに懐かしくて王道感あるけど。
先日『関ジャム』で取り上げられていた吉澤嘉代子「残ってる」も良い曲だし良いMVだった。
彼氏の家からの朝帰りを長回しで撮っただけのMVだけど、夜明けの情景は素晴らしく、曲の世界観を忠実に捉えた仕上がり。
リアルタイムで知ってたら候補だったかも。
やってると長くなりそうなので今回はこれまで。
- アーティスト: never young beach
- 出版社/メーカー: Roman Label / BAYON PRODUCTION
- 発売日: 2016/06/08
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貴乃花は、ただ貴乃花なだけなのか
かち上げ&張り手を事実上封じられた白鵬、未だケガからの復帰が遠いというか事実上の引退がちらつく稀勢の里の両横綱が休場し、一人横綱となった鶴竜も圧巻の連勝街道が一転4連敗、気付けば平幕・栃ノ心が優勝をかっさらうという波乱の展開となった大相撲初場所。
満員御礼となった土俵の外では、行事・式守伊之助のセクハラ、大砂嵐の無免許運転、栃ノ心も所属する春日野部屋の何年も前の暴力事件が取り沙汰されるなど、未だ相撲人気に水を差す事件が相次いでいる。能町みね子の言葉を借りるならば、「リーク合戦」の様相をも呈している。
理事選が近づく中、いったん落ち着いたかにみえた貴乃花の身辺が再び騒がしくなった。貴乃花が解任されたばかりの理事選に再び立候補できるか瀬戸際らしいのだ。
貴乃花は、貴ノ岩の暴行事件を発端とする一連の騒動を大きくした張本人である。
もちろん暴力を振るった日馬富士が悪いんだけど、貴乃花がマスコミはおろか、協会にすら一切を語らなかったことで、皆、日馬富士や貴ノ岩のことはとうに忘れ、貴乃花と協会、その先にいる白鵬との対立関係ばかりがクローズアップされることになった。
そして、そんな貴乃花の行動に何を見出すかで、世論は二分されることになる。
「暴行事件が起きたら警察が捜査するのは当たり前」
「貴乃花はこうと決めたらとことん貫く頑固な人」
「貴乃花が協会に報告しなかったのは当然だ。貴乃花は協会の闇、そしてモンゴル互助会の欺瞞を暴こうとしている」
「協会の理事であり巡業部長でありながら、協会に報告しないあの態度は何なの?」
「顔つきもヤバいし、マフラーちゃんと巻けよ。ヤクザみたいやん」
「伊勢ヶ濱もヤクザみたいだけど、ちゃんと謝ろうとしたのに無視って……」
社会人の端くれとしていえば、貴乃花はいい歳になっても闘い方をわきまえていない。彼の言う「品格」が何を指すかは分からないが、到底大人な振舞いとは言えないだろう。
周りがフォローして、忖度して、なぜにこんなに胸中を探らなあかんのだと、ちゃんとしている人ほど思ってしまいがちである。
ただ、長年のウォッチャーからすると、これが貴乃花なのである。
世の中に、これほどまでに空気を読まないことで人を惹きつけ、人に嫌われる男も珍しい。被害者の親方だったんだから、普通にやればほとんどの国民が味方についたのに、そんなことすら眼中に無いのだ。強いて言えば、長嶋一茂なんかはよく似てる。
かつて、理事選に立候補するために二所ノ関一門を抜けた時には、そこに分かりやすい信念があったから、多少乱暴な動きがあっても安心できた。洗脳騒動→兄弟母子の確執の時も、「花田勝氏」「勝は私の軍門に下った」などの不器用極まりない名言に、在りし日の若貴は戻ってこないのだなという寂しさを超えたおかしみがあった。
一方、今回は引き際も見えず、ひたすら泥仕合が続いているように映る。
その先にある意図を語ってもいいと思うのだが、それも一切示すことなく、忘年会かなんかでは「捨てるなよ 戦いを 男なら 最後に勝つ者になろうじゃないか~」と裕次郎を歌い上げてみせる意味深ぶり。
自ら語ることなく、周囲から立った煙で協会や白鵬を追い詰める、というアプローチなんだろうか。だとしても自らにも刃が当たり過ぎである。
むしろ心配になるのは、これも能町みね子のツイートで知ったのだが、貴乃花部屋が長らく新興宗教団体の支援を受けているという事実である。
大阪場所ではこの団体が宿舎も提供し、千秋楽パーティーもこの団体が主催している……。
言われてみればそうだが、そもそも貴ノ岩は事件以降姿をくらましており、この新興宗教団体が匿っているのでは、という説すらある。
この宗教団体のホームページを見ると、この団体の思想のヤバさと、貴乃花部屋とのただならぬ関係が一発で分かる。
ただのタニマチだったらいいのだが、貴乃花の一連の行動が、洗脳に基づくものだったとしたら……それもまた貴乃花。
もう、どこまでいっても、いくつになっても放っておけない男だ。
『ガキ使』ブラックフェイス問題でみえた、あまりにも深い分断
正月からずっとモヤモヤしてしまったのが、『ガキ使』の恒例企画「笑ってはいけない」で問題になった、「浜ちゃんブラックフェイス(黒塗り)問題」。
今日『ワイドナショー』があったので、これを受けてのニュースが一通り流れたらこの騒ぎは収束すると思うが、批判と擁護どちらもしっくりこなかった。松ちゃんがボケたように、「浜田が悪い」で切り抜けられたらどんなに幸せか。
◆主な批判意見
「人権後進国」「世界じゃあ常識」「文化的鎖国ぶりが露わ」
「ミンストレル・ショーを知ってるか?」
「オリンピックの開催を控える国とは思えない」
「逆にヒロシマ人の真似といってボロボロになった格好で笑いをとっていたらどう感じる?」→これ、ズレまくってるし、結構問題発言だと思うが
「あと、ベッキーへのタイキックは女性暴力といじめとパラハラを助長するものである」
◇主な擁護意見
「エディ・マーフィーの扮装をしているだけ」
「日本人に黒人への差別意識なんて無いのに」
「シャネルズやノッチは何も言われなかったのに」
「どんどんバラエティが面白くなくなる」
「こういうことを過剰に言う奴こそ差別を助長している」→これはよく言われることだが分からなくもない。
まとめてみて改めて思うが、互いにボロを出し合いながら溝を掘りまくっているのである。そして、自分のように、その溝が深く掘られ行くのをほとんど人が眺めつつ、ため息をついている人もいることを分かってほしい……。
ネット上で繰り返される論争は、今回のようにしばしば上から目線のポリコレVSリベラル大嫌いな保守の代理戦争にもなりがち。
ポリコレを重視する人は「無知なお前らに教えてやる」という傲慢さが言動に表れてしまうので、味方が増えていかない。これは、昨年の衆議院選挙や角界騒動の時にも感じた。
今回ややこしいのが、普段はそれぞれの陣営にいてもおかしくないお笑い番組のファンの存在だ。
彼らは常に「不謹慎だ」「規制すべき」という批判を番組が食らうと我が子を守るがごとく闘争本能に火が点きがち。で、「昔は良かったのに今回はなんでダメなんだ」と的外れな反論をして墓穴を掘っている人もいる。
仮にタブーが増えて行っても良い番組はそのスレスレで頑張ってるし(「フューチャークロちゃん」とか最高だったじゃん)、昔のテレビ番組を振り返っても結構面白くない番組多いよ。テリー伊藤がやってたやつとか破天荒なだけであって。
他と比べ、今回の騒動が大きなものになった要因は、これが問題であると声を挙げたのが日本に在住する黒人だったことだろう。それをハフポストが拾い、拡散、BBCやNYTが報じるに至った(彼ら自体は事実を報じているだけであって、オピニオンとして非難しているわけではない)。
「ブラックフェイスをやめろ」「黒人はオチじゃない」という当事者の声はちゃんと受け止める必要があると思う。その良し悪しは本当にあると思うが、差別をされる側、暴力やハラスメントを受ける側がどう捉えるかが重要ではあるし、する側はそれに気付けないことがほとんどだから事が起こるわけで。
ただ、それ以外の黒人の声を自分はちゃんと収集できていない。同様に怒りの声を挙げているのであれば、やはりそれは欅のナチスっぽい衣装やラッツ&スターとももクロの黒塗りパフォーマンス時のように、「タブー」としていかなければならないのだと思う。
つい最近も、H&Mが「ジャングルで最もかっこいいサル」と書かれた衣服を、黒人の男の子に着せて店が襲撃されたりしていたりと、差別を取り巻く状況はよりシビアで笑えないものになってきている。(これ言うと話がややこしくなるし、逸れるけど、黒人のアジア人差別は本当にひどい。アフリカとかに行ったら分かる。自分たちが差別されてきた歴史があるのにあれはどうかと思う)
それは、言うまでもなくトランプが状況を煽っているのである。(世界は日々シリアスに炎上しているのに、浜田・マーフィーは果たして本物の「火種」だったんだろうか、とは思えてならないが)
ダウンタウンや番組側に差別の意図は無い。けど、『ガキ使』を長年見てきた人なら、彼らが「黒人をオチに使ってきた」ことは知っているはず。
たとえば、最初の「笑ってはいけない」では2メートル級の黒人の板長や、温泉でパンツを探す黒人が出てきた。ボブ・サップが七変化に挑んで罰金と爆笑をかっさらっていったこともあった。
今や伝説的番組『ワールドダウンタウン』では、ダウンタウンの共演者は外国人のみで、アメリカのニュース番組をシニカルに捉えた内容だった。実は、そこにもエディ・マーフィーが出ていたりする(扮装ではなく本人役として)。ダウンタウンのファンとしては、エディで笑うのは初めてではないのだ。
日本人に黒人に対する深い差別意識は無いかもしれないが、少なくとも黒人の「異物感」はある。渋谷・新宿・原宿の一部ならともかく、普通の日本人にとって身近な存在ではないのだから。
かく言う自分も、黒人の板長でも、ボブ・サップの七変化でも腹がよじれるくらい笑ってきた。今見てもめちゃ面白い。黒人の板長が温泉旅館にいるわけがないと思ってるから。それが古いと言われれば、また、無意識のうちに差別感情が含まれているから笑うのだ、と指弾されるならば、もう、自分は「差別している」ということになるのかもしれない。
もし、黒人が板長になるのが当たり前の時代が訪れるならば、黒人の芸人がありふれた存在になるのならば、これらの演出はすべて「面白くない」ものになり下がると思う。板長はまだしも、見習いの黒人はいそうで、気分を害するものになっているのかもしれない。『みなさんのおかげです』のLGBT問題のように、価値観は急速に変わりつつある。
最後に話を変えると、ブラックフェイス問題より個人的には、今回の「アメリカンポリス」が前回の「科学博士」と比べ面白くなかったことの方が問題。
前回はサンシャイン斎藤や乳首ドリルに挑んだ西岡徳馬、原田龍二のアキラ100%など、ゲストが想像以上のポテンシャルを見せつけ、方正の笑い袋のくだりなど無限に笑えるような時間があった。
ここ数年は、
バス→引き出しもので潰し合い→レクリエーション→バス→鬼ごっこ→潰し合い→芸人の体当たり芸→蝶野ビンタ→驚いてはいけない
と特に固定化し過ぎているので、仲間同士の潰し合いと、ゲストがいかに面白いかにかかっているのだ。
書いても結局まとまらずモヤモヤするばかり。
とりあえず今年の年末は、この騒動自体をいじるような爽快なネタをぶっこんでほしい。
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『ブレードランナー2049』――Why not me
『ブレードランナー2049』ようやく観た。睡眠不足と風邪で2時間40分、予想通り非常につらい鑑賞になった。
1カット1カットが長く、まるでタルコフスキーのように絵画的なロングショットが続くため、序盤から中盤にかけて別の記憶=夢を何度も刷り込まれそうに……。
前作も観直した上で観たけど、レプリカントと人間、そしてAIを分かつものは何か。物語が進行するにつれ、その境界線はさらに曖昧になって行く。
そもそも、デッカードはレプリカントなのかすら結局曖昧なのだから、「あの子」はレプリカント同士の子なのか、人とレプリカントのハーフなのかすら分からないままだ。
そして、副題にも入れたが、核爆発で廃墟となったラスベガスでライアン・ゴズリング兄貴扮するKはデッカードと会い、それまでのアイデンティティを揺るがす秘密を知ることになる。
Kに運命と物語を思いっきり吸わせ、とっても思わせぶりな流れだっただけに、このちゃぶ台ひっくり返しっぷりは相当ひどくて新鮮だった。
Kはまさにオアシス“Supersonic”の有名な一節「I Need To Be Myself I Can’t Be No One Else」のごとく、最後の戦いに臨む。そのシーズンの主役だったけど日本代表には選ばれなかった選手みたいな立ち位置で……。
荒涼とした『ブレードランナー2049』の世界で救いだったのは、アナ・デ・アルマスだろう。『ノック・ノック』(写真右)のサイコパスビッチと同じ女優だと言われないと気づかないほどかわいかった。まさに悪魔から天使。
スパイク・ジョーンズ『her』ともろ被り(パクリ?)なあの合体シーン然り、近い将来確実に流行るのはこんなパーソナイズできる機能を持つバーチャル恋愛AIなのだろう。レプリカントはきっと面倒くさい(笑)。