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ネットフリックス映画を考える その1:『アイリッシュマン』等

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圧倒的な資本とグロ―バリゼーション&ローカライズによってドラマ界を制したネットフリックスが、ここ2、3年で映画賞レースに乗り込むようになった。
「配信された映画は映画と呼べるのか?」といった、個人的にはくだらないと思う議論をも呼び込んでいるが、あと数年で、いや来年の作品賞を獲るのはネットフリックス映画かもしれないというくらいのカタストロフィが起きている。

それはなぜか。オスカー経験のある一流の映画監督が撮っているからに他ならない。
つまりネットフリックス映画とは、作家主義復権、クリエイター・ファーストだ。
豊富な資金と裁量を呼び水に、優れた映像作家を集め、多少地味でも何でも企画を通してあげる。クリエイターにとっては神同然。MCUをモデルとするプロデューサー主義の大手スタジオとは正反対のアプローチともいえる。
ネットフリックスが欲しているのは権威であり、ブランドであり、既存のシステム=大手スタジオと映画館ら興行方が牛耳る業界の破壊だ。

ただ、それらは果たして本当に成功しているのだろうか。
賞レースには絡めても、エンタテインメントとして本当に面白いものになっているのか。個人的には少し疑問なのだ。

 

 まずはスコセッシ×デ・ニーロ×パチーノ×ペシという後期高齢者スターが勢ぞろいしたアイリッシュマン』
評価する人の気持ちもよく分かる。だが、とにかく長い。『ゴッドファーザー』なら観れちゃうけど、地味で長いのは……。
実際視聴したほとんどの人が途中で離脱している。リズムが後期高齢者そのものなのだ。

人生の終わりを前にして自分が何をしてきたかを振り返ったら、とっても虚しくなってしまった男の話。周囲のマフィアは人となり以前に登場と同時にいつどのように「死んだ」かが示されるんだけど、あくまで物語の進行に寄与するものでもない。マフィアの隆盛も一瞬のものだが、長生きするのも虚しい。どうすればいいのか。
顔はいくらCGで若くしても動きは70代のそれ。数少ない直接的なバイオレンスシーンは観てて笑えてしまった。
スコセッシがおじいちゃんになったから映画が長くなったとか言われてるけど、イーストウッドは必ずしもそうではないし、尿意も近くなるんだから当てはまらないかと……

個人的に面白かったのは魚のくだりのグダグダ。魚は座席に直に置いたらダメだろ。ホッファの息子が「ブレイキング・バッド」のトッド役の俳優だっただけに。
あと皆言ってるけどあの冒頭の字幕はありえない。無駄なローカライズ

 

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続いてアルフォンソ・キュアロンが自身の少年時代を回想するようにして撮った『ROMA』
ネットフリックスの映画界進出の象徴的作品であり、実際昨年のオスカーの台風の目となった。
タイトルはパリ、テキサスみたいなものでした。

あらすじを全く入れないで観始めたが、長回しとモノクロで是枝または小津っぽい淡々とした家族ドラマということで、結構な忍耐を強いられた感。キュアロンなので当然一つ一つのショットは美しいんだけど……。
寡黙な家政婦である主人公はクソ中のクソ男にひっかかり妊娠。家政婦を雇う妻は旦那に逃げられる。仕送りもなく、4人の子供も置き去り。そんな彼女たちが次第に真の意味で家族になる様を、当時のメキシコの情勢も織り交ぜながら描いていく。
どうしようもなく泣きたいのに、周り(や社会情勢)はそんなの知らないとばかりに慰めにならないし、ましてや主人公を追い詰めていく。
こんなに絶賛されている本作に本音を言えば、印象に残ったのはクソ男のチン〇と犬のクソ。犬のクソはマメに片付ける家政婦であってほしかった(笑)。
一向に片付かない犬のクソと、どう考えてもガレージの幅に合わない車にイライラ(笑)。
 

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ジェイク・ギレンホール&ダン・ギルロイナイトクローラーコンビということでかなり期待してたのが『ベルベット・バズソー:血塗られたギャラリー』
これがひどかった……。

 

画家の怨念によってアート界を牛耳る関係者が呪われていくだけという、まさかのB級ホラー(笑)。『ナイトクローラー』と共通しているのは、ほとんどクソ中のクソしか出てこないということ。
『ヘレディタリー』のあの方も素敵な顔芸を見せてくれる。

ジェイクは批評家役だが、彼のクセの強い演技が健在なこと以外「批評」に値しない……あと、「死体発見係」と化したメガネの女の子の不憫さ。
ナイトクローラー』が本当に素晴らしい作品だっただけに、ただただ残念。


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『全裸監督』だけでなく、ネットフリックス日本法人はエログロでまずは「クールジャパン」をやろうとしている模様。

椎名桔平主演にテンション上がりつつも、観る前からうっすら嫌な予感がして、そのまま的中してしまったのが、園子温があの北九州殺人事件にインスパイアされたという『愛なき森で叫べ』

徹頭徹尾園子温ワールドって感じかつ、これまでの美味しい部分を寄せ集めたストーリーには冒頭から食傷気味で、とにかく長く感じた(園子温は常に長いけども)。
北九州感はあったけど、ミュージカルじみたシーンや射殺事件のラインが蛇足過ぎる。

椎名桔平はいい感じ。ドスの効いた「ノー・フューチャー」は気持ちいい。ただ『アウトレイジ』のように、吸ったタバコを笑いながら警官に投げつけるぐらいのもっと凶暴なヤバさを欲していた。

 

ナイトクローラー(字幕版)

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  • メディア: Prime Video
 

 『ナイトクローラー』は本当面白いからぜひ。

アウトレイジ [Blu-ray]

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 椎名桔平のタバコ投げつけシーン