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Today's MV : Radiohead - Lift

本日のMVは、名曲と言われながらリリースされてこなかったRadiohead 「Lift」

トム、もう一回ボタン押せば解除されるぞ、と思いつつ、各階には乗り降りする人がいて、エレベーターを降りていくほどシュールなことになるという、「I Promise」に続く90年代的小ネタMV。
 

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『ダンケルク』ーー逃げるは恥だが役に立つ

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聞きしに勝る、陸海空恐るべき「映像体験」だった。

ダンケルククリストファー・ノーランの新境地ともいうべき作品だ。
凄まじい音響や、終始戦場に流れ続けるハンス・ジマーのローきつめのスコアとは対照的に、戦場という理屈抜きの地獄を前に、ノーランは理屈を捨て、IMAXの力も借りて言葉少なく観客を戦場のただ中に放り込んだ。

戦争映画としても『ダンケルク』は異色だ。
プライベート・ライアン以降当たり前となった、目を背けたくなるような人体破壊描写は一切無い。主人公は銃を持たず、ほとんど「戦わない」(戦える状態にない)戦争映画は、常に死と隣り合わせ、行き当たりばったりの撤退をスリリングに描く。

 

ノーランは一貫して「時間」と向き合ってきた映像作家だ。
メメントは10分しか記憶を保てない主人公に寄り添うように、物語が逆行するという奇抜な設定を見事に整理し、インセプションでは夢の世界を階層化し、かつ時間の流れをそれぞれ変えてラストのアクションにこれまでにないスリルを与えた。そしてインターステラーでは必然ともいえるが、「宇宙」の中に流れる時間を残酷に、そして美しく可視化してみせた。

ダンケルク』は、一部宣伝文句で「タイムサスペンス」と呼ばれている。陸(1週間)・海(1日)・空(1時間)の時間の長さを分け、それぞれの視点で運命を交差させている。これも戦争映画としては異例だ。
3つのシークエンスそれぞれに流れる時間が違うことは、そのまま歩兵の悲惨さを浮き彫りにした。ドイツ軍の猛攻から命からがら逃げた先に待ち受ける桟橋の長い長い列。そこを集中的に空爆され、運良く船に乗れても魚雷や空爆から逃れることはできない。船から投げ出され、また船に乗るの繰り返し。
心身ともに崩壊寸前で、表情に乏しい歩兵たちに対し、海兵やパイロット、遊覧船で救出に向かう民間人は使命感に燃えエモーショナルなことを言う。
地獄の最前線は、人間性をかくも奪う。

 

 

『メッセージ』ーー言葉は分断と時空を超える

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6月頭に観たドゥニ・ヴィルヌーヴ監督のSF『メッセージ』について。

 

ヴィルヌーヴとの相性は全然よくないけど、本作はSF映画らしからぬ感慨が押し寄せる力作だった。宇宙に行かないSFはあるけど、生命すら脅かされることのない(とはいえ危険が迫るシーンはあったが)SFは珍しい。

突然世界各所に現れたばかうけのような宇宙船に動揺する世界と、そんな中で宇宙人との会話を探り探り試みる女性言語学者ルイーズを描いた本作。

分断された世界を繋ぐ言葉とは、思想とは、勇気とは。そんな2017年とも相通ずる課題をこねこね考える一方で、意外にも本作はあたかも君の名は。のように、時間軸のミスリードが観る者にエモーショナルに突き刺さる流れにもなっている。
言葉の力は分断を超えられる、までであれば、理知的なSFだったね、でも物足りないね、で終わったのだが、宇宙人の言語を解読するにつれ、彼らの言語には現在・過去・未来の概念が無いことが分かり、物語は一気に活性化する。
つまり、彼らは時空を超える存在なのだ。それが解決と和解のキーになり、そしてルイーズの人生に大きな影響を及ぼす。

 

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『メッセージ』は、なんやかんやですれ違ってきたヴィルヌーヴ作品の集大成的なつくりだった。
宇宙人は『複製された男』のクモだし、音響の素晴らしさは『ボーダーライン』、謎に向かうベクトルの強さはプリズナーズ
あとはやはり「時間」「宇宙」というキーワードからノーランのインセプションインターステラーがちらつく。

 

この狂騒こそが主役ーー『アメリカン・クライム・ストーリー/O・J・シンプソン事件』

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最近、専ら映画ではなくNetflixで海外ドラマばかり観ている。
といってもちゃんと追えているのはブレイキング・バッド』『ハウス・オブ・カード』『ベター・コール・ソウル』くらい……。
通勤時間に少しずつ観ている程度だから、傑作と呼ばれる作品がドンドコ生まれている現状に全く追いついていない。
『マスター・オブ・ゼロ』『ナルコス』『ストレンジャー・シングス』『オザークへようこそ』『13の理由』『ザ・ミスト』ーー完全に途方に暮れている状態だ。

『ベター・コール・ソウル』シーズン1を観終えて、ちょっとアルバカーキから離れたいと思った時に、Twitterで激賞されていた『アメリカン・クライム・ストーリー/O・J・シンプソン事件』に行き着いた(結局弁護士(笑))。

O・J・シンプソンーーアメフトのスター選手/個人的にはカプリコン・1カサンドラ・クロスといった良質な70年代映画にも出ているスター/で、妻を殺して裁判にかけられた人

ぐらいの認識しか自分にはなく、果たして関心の湧かない事件の裁判ものなんか観て面白いんだろうかと思ってたんだけど、本作においては全く心配いらない。
なぜなら、O・Jが主役というよりかは、「O・J・シンプソン事件」が主役だからだ。このドラマを観て、すぐカッとなってまくしたてるO・Jに感情移入できる人はそう多くないだろうし、正直感情移入することをあまり必要としない(こいつなら殺したに違いない、とすら思える)。
正確にいえば、このドラマはO・Jが殺人者かどうかすら関心が無いようにみえることからして、O・J・シンプソンの裁判が巻き起こした狂騒」が主役といっていい。なぜ2016年にO・Jなのか、アメリカが分断を加速させている今、このドラマは繰り返しさらされるアメリカの闇を映し出している。

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『アメリカン・クライム・ストーリー』は、事件が起こった日からO・Jが無罪判決を受けるまでを、検察側と弁護側の対決、そして彼らに取り巻き、大きな影響を与える世論を交えて描いている。
さっきも書いたが、このドラマにおいて魅力的なのはO・Jでは全くなく、O・Jを取り巻く人物。誰にも感情移入できないが、ある時は同情し、ある時はざまーみろと思うような強烈なキャラばかりだ。彼らの言動がアメリカ全体を良くも悪くも動かし、やがて彼らも飲み込まれていく……。

O・Jを断罪せんとするも、自らも離婚裁判に足を引っ張られる女性検事マーシャ、良い奴でマーシャを支えるけど、正直者が仇となる検事クリスがタッグを組む検事側。
一瞬ジョン・トラボルタに見えなかったが、よーく見たらトラボルタな、風見鶏的弁護士シャピロ、狡猾なベテラン弁護士リー、常に胃腸弱そうな、あのキム・カーダシアンの父ロブら「ドリームチーム」と呼ばれた弁護士軍団も曲者ぞろい。
そして、最も濃いのは、敏腕黒人弁護士ジョニー・コクラン。顔面の圧、声の張り、白人化していたO・Jを「プロデュース」する手腕、そしてこの事件を利用して人種問題やロス市警の闇を全米に暴かんとする打算! 

弁護士軍団は、O・JのDV問題や証拠に基づいた検察側の主張を老獪なテクニックでかわしながら、陰謀という「物語」や人種問題を持ち出し、証拠の不備を突いて強行突破を図る。その様はヒールにも見えるし、弁護士の鑑にも見え(検事側も然り)、自分が陪審員だとしたら、どっちも本音と建前が凄すぎて審理無効にしたくなる(笑)。

検察側も弁護側も、「世紀の裁判」とされ、全米で生中継されたことによって名声を得る一方、公私にわたりマスコミに叩かれ、まさにO・Jと同じような目に遭うことになる。劇場型の裁判は世論を多分に意識したものとなったため、裁判所の外は常に分断が加速し、一触即発の様相を呈す。
文字通り互いに心身を削り合っていく様が後半描かれていくが、なりふり構わない対決に振り回される陪審員や判事の惨状が描かれる8話~9話もとても興味深い。

他のドラマと違い、次のシーズンは全く違う話らしいので少し気軽。
ぜひ観てほしい。

 

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Today's MV : Ariana Grande - One Last Time

ウィークエンドに続きPOVもの。
マンチェスターでのテロ事件以降また目にするようになったアリアナ・グランデの「One Last Time」。隕石落下のパニックをアリアナの恋人の目線で描いている。

曲の切ないトーンと世界の終わりが合ってるが、ウィークエンド「False Alarm」のようなクオリティではなく、パニックの様子もふーんという感じではある。
むしろ「Everyday」のほうがネタとして面白い。

 

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