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ネットフリックス映画を考える その2:『アンカット・ダイヤモンド』『マリッジ・ストーリー』等

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前回ではかなり否定的な目線でネットフリックス映画を取り上げたんだけど、その2ではめっちゃ面白かったわけじゃないけど良かったものを並べています。

まずは、アダム・サンドラーがゲスな宝石商ハワードを怪演した『アンカット・ダイヤモンド』
まずネタバレでもなんでもないので触れると、これはダイヤモンドの映画ではない(原題は「Uncut Gems(宝石)」。さほど重要でもないから適当な邦題つけたのか?)。

本作の強烈な個性となっているのは尋常じゃないうるささ。
サフディ兄弟の作品を観るのは初めてだが、こういう作風なんだろうか。
ハワードは借金取りや仕事相手、家族に愛人と四方八方と100人組手のようにしゃべり倒していく。べしゃりで圧倒して本質(返済や修復)から目をそらし続ける。
後半は物語のフォーカスが絞れて普通の映画のスリルを表現していくのだけれど、肝はやはり前半にあると思う。
前半は登場人物から敢えて引いた長回しを入れたり、OPN(oneohtrix point never)のドリーミーな音楽も相まって、70年代頃のニューヨーク映画の雰囲気もある。あ、THE WEEKNDも出てます。
ラスベガスにはああいうスポーツ賭博のコーナーがあって驚いたが、これが舞台になった映画を観るのは初めて。

アダム・サンドラーはどんなに強面をつくっても、この笑顔と白い歯。
アナ雪でおなじみイディナ・メンゼルのカイヤっぷりも怖い。

 

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次は『フランシス・ハ』『イカとクジラ』のノア・バームバック監督『マリッジ・ストーリー』
アダム・ドライバースカーレット・ヨハンソンアカデミー賞にWノミネートされ、助演のローラ・ダーンが受賞するなど高く評価された。
『ブルー・バレンタイン』『こわれゆく女』等、観るだけで心をすり減らしていく夫婦ゲンカ映画の系譜で、弁護士に食い物にされていく様は、監督の実体験なのだとか……。

互いの良いところを伝え合う印象的なシーンで一瞬ほっこりさせた後は、離婚の無間地獄で真っ逆さま。ただ、どこかそんな地獄にもおかしみがあって、夫婦や子供、二人を見守る家族の腐れ縁を感じさせる、少しばかり救いのある物語になっている。

アダム・ドライバーが顔を真っ赤っ赤にして言ってはいけないことを言う大ゲンカのシーンは、名演技という言葉では表せない、なんというか俳優としての全エネルギーを使い果たした凄まじいものを見せてもらった。夫婦映画の歴史を塗り替えた瞬間だと思う。

 

予告で大フィーチャーされてるポールの「Maybe I'm Amazed」、改めて聴くと最高。
Abbey Road』の「Oh! Darling」ばりの絶唱とソングライティング。

MCCARTNEY [CD]

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  • アーティスト:PAUL MCCARTNEY
  • 発売日: 2017/11/17
  • メディア: CD
 



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最後は番外編で『エル・カミーノ:ブレイキング・バッド THE MOVIE』
これは『ブレイキング・バッド』の続編なので、面白くないはずが無いわけで。

タイトルからして「その先」だと思っていた時間軸の手前の物語だったが、『ブレイキング・バッド』の世界を崩さずに、かつジェシーの生きる道を骨太に描いてくれた。『マインドハンター』とはまた違う車シーンのカメラアングルへのこだわり、これぞなタイムラプスや砂漠のロングショットなど、技巧も秀逸過ぎる。最後は西部劇な味わいすらあった。

フラッシュバックされる登場人物たちとの会話の一つ一つが味わい深いが、撮り下ろしなので彼らの老け具合はつらい(特に金髪豚野郎になってしまったトッド(笑))

 

2回書いてみて思うのは、
・劇場で観ていない
・劇場公開されていたら観に行っていない
・自由を与えたら尖り過ぎてしまう作家でついていけない
から中途半端な評価になってしまうのかも。
『エル・カミーノ』はドラマの続編だから上記すべてクリアしているし、サフディ兄弟やノア・バームバックのようなインディ作家なら配信でも相違無いといえる。

シティ・オブ・ゴッド』『ナイロビの蜂』のフェルナンド・メイレレス監督『2人のローマ教皇や、『ウインド・リバー』のテイラー・シェリダン脚本の最後の追跡など、まだ観てない作品は多い。
『6アンダーグラウンドのように、今は他でドンパチやれないマイケル・ベイに砂場をあげたような作品は面白いのかもしれない。